WSI DAILY 2014/12/22


★2014年度国防省拡大幹部会議

2014年12月19日、定例の国防拡大幹部会議が国防省で実施された。

今年は新たにオープンした国家国防司令センター(NTsOU)が初めて会場となった。

同会議におけるプーチン大統領の演説は、大統領府のホームページに掲載されているが、中でも興味深い点は次の通りである。

全般情勢

  • 我々を取り巻く環境は厳しい。米国のミサイル防衛網が建設され、東欧を中心とする欧州でNATOの活動が活発化している
  • このような状況下に置いてもロシアの軍事ドクトリンは防衛的性格を保持する。しかし、自国の安全保障を確保するために結果的に厳しい姿勢を撮らざるを得ない。
  • クリミア危機における軍指導部及び現場の部隊の働きに対して感謝する。
  • ロシア軍は変わった。新たな輪郭へと移行し、近代的になり、最も困難かつ責任ある任務を遂行できるようになった。それは抜き打ち検閲の結果及び「ヴォストーク2014」を含む3500回の訓練・演習の結果から明らかである。
  • 国家国防発注はほぼ完璧に遂行された。

軍での勤務

  • 軍の質的な発展に伴い、軍で勤務することの権威が高まっている。
  • 契約軍人は7万5000人増加した。
  •  軍で契約軍人として勤務することは真に競争力(魅力)を持つようになった。2014年時点において、契約軍人の3分の2は中等または高等教育を受けている。

軍の発展に関する優先課題

  • 軍にはさらなる発展が必要である。国家国防発注及び幾つかの国家プログラムを実現せねばならない。
  •  第1に、2016-2020年までの国防計画を策定することであり、2015年12月に(大統領の)承認を受けることになっている。国防法改正、軍事ドクトリン改訂といった2014年中の動きと、2014年11月26日の決定に基づき、国防政策の枠組みは短期・中期・長期の計画によって構成されることとなった。
  • 第2は戦略核戦力の全構成要素の発展である。これはグローバルな対等性を得るための最重要のファクターであり、ロシアに対する大規模侵略を不可能とする実際的な能力である。2015年は大陸間弾道ミサイル(訳註:ICBMとSLBM合計)を50基以上配備するとともに、戦略爆撃機の近代化を継続し、弾道ミサイル原潜ウラジミール・モノマーフとアレクサンドル・ネフスキーを戦闘当直に就ける。
  • 中期的には地上配備型核兵器は完全に新兵器へと更新し、Tu-160及びTu-95MS戦略爆撃機は全機近代化する。さらに新世代戦略爆撃機が開発される。
  • 第3に、2015年中に航空宇宙軍の創設を完了せねばならない。この新たな軍種により、航空機コンプレクス、ロケット・宇宙アセット、防空アセットを統一的に運用し、ロシア上空の航空宇宙空間の防御レベルを向上させることができる。
  • 第4に、戦略的重要地域の防衛を質的に向上させる。その対象となるのは北極その他の地域である。12月15日、北方艦隊を基盤として統合戦略コマンドが設置された。来年はノーヴァヤ・ゼムリャー島、コテリヌィ島、ウランゲリ島及びシュミット岬で軍事インフラの建設が完了する。
  • 北極で軍事化を求めているわけではない。北極におけるロシアの行動は抑制的かつ規模の面でも穏当なものであり、ロシアの防衛能力を確保する上で絶対に必要なものに限られている。
  • 第5に、高度な常時戦闘準備態勢を保つため、抜き打ち検閲を継続する。来年は全軍管区の全軍種・兵科、関連する連邦機関及び地域機関において抜き打ち検閲を実施する。

これに続き、国防省公式サイトに掲載された2014年の総括報告の中から興味深い点を抜粋する。

全般的な状況

  • 戦略ロケット軍では3個連隊のヤルスICBMが実戦配備についている。
  • Tu-160とTu-95MSが合計8機近代化改修された。
  • 海軍では最新鋭の弾道ミサイル原潜ユーリィ・ドルゴルキーが常時即応状態にあり、年末までに同クラスは3隻まで増加する。さらにクニャージ・ウラジミールとクニャージ・オレグの2隻が起工される。
  • 合計38基の大陸間弾道ミサイル(ICBMとSLBM合計)が受領された。うち、22基はSLBMである。長距離弾道ミサイル戦力に占める近代的兵器の比率は56%に増加した。
  • 通常戦力に関しては、クリミアに独立した部隊グループが編成された。堂半島の既存の兵力に加え、7個の連合部隊(師団、旅団)及び8個の部隊が編成された。
  • 14個UAV部隊が編制され、189機のUAVが納入された。これは、我が軍がこれまでに受領したUAVの総数にほぼ等しい。
  • 国防省に国家UAVセンターが設置され、軍だけでなく他省庁のUAV要員の養成を開始した。UAVの飛行回数は2013年から倍増した。
  • 空軍では混成航空師団及び防空師団が編成された。全ての航空宇宙防衛旅団は師団編成に改編された。
  • 年末、黒海艦隊に独立潜水艦旅団が編成される。
  • 北方艦隊を基盤として北極に統合戦略コマンドが設立された。既存の防空師団及び海軍歩兵旅団に加え、北極自動車化歩兵旅団が編成されている。コテリヌィ島には対艦ミサイルと防空システムを装備する戦術グループが配備された。極地でも通常の生活が行えるよう、特殊な移動式兵舎が配備された。
  • 航空宇宙防衛部隊では、高度工場準備型レーダー(訳註:ヴォロネジ弾道ミサイル早期警戒レーダーを指す)がカリーニングラードとイルクーツクにおいて実戦配備に就いた。さらにバルナウルとエニセイスクでも同種のレーダーが試験配備に就いた。
  • 空挺軍の第45特殊任務連隊が第45特殊任務旅団に再編された。

装備調達状況

  • 陸軍
    • イスカンデル-M作戦・戦術ロケット・コンプレクス2個旅団
    • 戦車294両(近代化)
    • その他の装甲戦闘車両296両
    • S-300V4防空システム2個システム
    • 自動車約5000両
  • 空軍
    • 航空機142機
      • Su-30戦闘機及びSu-35S戦闘機合計53機
      • Su-34戦闘爆撃機16機
      • 輸送機・練習機合計28機
      • MiG-31BM(近代化改修)18機
    • ヘリコプター135機
      • 攻撃ヘリ46機
      • 武装強襲ヘリ72機
    • S-400防空システム7個コンプレクス(大隊)
  • 海軍
    • 巡航ミサイル搭載原潜セヴェロドヴィンスク
    • 大型潜水艦(通常動力型)ノヴォロシースク
    • 水上艦5隻
    • 戦闘カッター各種合計9隻
  • 航空宇宙防衛部隊
    • 新型ロケット「アンガラ」の試射成功
  • 国家国防発注が100%履行された結果、全軍の近代的兵器の比率は2013年から平均7%上昇し、軍種・兵科によって26-48%へと上昇した。この結果、全軍種・兵科を通じた近代的兵器の比率を30%にするようにとの大統領令は完全に履行された。
  • 修理済みの装備は85%となり、2013年に比べて5%上昇した。
  • 部隊における修理組織の再建、国防省傘下企業及び軍需産業コンプレクスにおける合理的な修理計画・保守作業・近代化作業、予備部品の調達継続が可能となり、修理費用は30倍となった。
  • 似たような機能・性能を持つ将来型兵器・装備の編成(統合?)作業が実施された。これにより、2025年までの国家装備計画の費用は55兆ルーブルから30兆ルーブルに削減された。

人員充足

  • 軍に高度技術兵器・装備を導入するため、契約軍人を増加させている。
  • 現在、契約軍人は合計29万5000人であり、昨年よりも7万5000人増加した。契約軍人の募集計画は100%遂行された。
  • 軍で勤務している人員の65%は中等もしくは高等教育を受けている。
  • 契約軍人の91%は30歳以下である。
  • 全ての契約軍人は、ロシア全土に設置された21カ所の訓練センターで4週間の訓練を受けている。
  • 徴兵の受け入れ態勢が改善された。全ての徴兵募集所に電子カードと衛生装置が導入された。
  • より才能ある人材が軍で勤務するため、5個化学研究中隊が編制された。
  • 65の民間大学で予備役兵士及び予備役下士官を養成するための軍事訓練が実施され、1万4000人が訓練を受けた。この新制度により、民間の専門教育を受けつつ専門的な軍事訓練を受けられるようになった。

国家的・軍事的指揮システムの改善

  • 軍指導部の指揮及び国防力強化のため、国家国防司令センターが設置された。
  • これにより、国家の全軍事組織をリアルタイムで指揮することが可能となった。
  • 各軍管区にも地域センターが設置され、現場の部隊まで含む指揮システムが展開される。
  • 軍の指揮システムのための技術的基盤も発展しつつある。東部軍管区には32基の指揮システムが導入された。空挺部隊では自動指揮システム「アンドロメダ-D」の配備が完了しつつある。
  • 陸軍では自動車移動式新型通信システム468基が配備された。
  • 兵站管理システム「スヴェトリーツァ」による効率化の効果が認められた。

以上、いろいろと見所は多いが、特に注目されるのは空軍と航空宇宙防衛部隊(VVKO)が合併され、航空宇宙軍に再編されることが正式に確認された点、そして2025年までの国家装備計画(GPV-2025)の総額を30兆ルーブルとしている点が特に注目されよう。

特にGPV-2025については、昨今の経済危機の中で財務当局が一部装備計画の先送りによる大幅減額を主張しているが、上記の報告を信じるならば、軍は現行計画(19兆ルーブル)をはるかに上回る55兆ルーブルを要求したものの、30兆ルーブルで「手を打った」ということになる。

GPV-2020の策定に関しても、軍は当初、38兆ルーブルという巨額の予算を要求していたから、もともと軍の要求額はこのあたりだったのだろう。

だが、ロシア経済の状況が短期的に改善することが考えられない中、財務当局がこのような巨額支出に納得しているとは考えにくい。今後、一波乱がありそうで、注目されるところだ。

 


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