パキスタンのシャヒーン-1A

WSI DAILY 2014/8/19


★アゼルバイジャンが中距離弾道ミサイルを導入?

ロシアのINF違反が問題となっているが(詳しくはYahoo!ニュース個人の拙稿を参照)、ここへ来てアゼルバイジャンが中距離弾道ミサイルを保有しようとしているとの情報が持ち上がってきた。

アゼルバイジャンのニュースサイトHaqqin.azによると、同国は射程130kmのイスラエル製弾道ミサイルEXTRAと射程2000kmのパキスタン製弾道ミサイル(タイプ不明)を導入する計画であるという。

注目されるのは、後者だ。現在までに実用化されているパキスタン製弾道ミサイルとしては、射程750kmのシャヒーン-1と射程1500kmのガウリ-1(実態は北朝鮮製のノドンと言われる)、射程2000kのガウリ-2がある。

したがって、情報の真偽を措いて該当するミサイルを探すと、この中ではガウリ-2が該当しそうだが、2012年にパキスタンが初めて試射に成功したシャヒーン-1Aも2000km近い射程がある。

パキスタンのシャヒーン-1A
パキスタンのシャヒーン-1A

これ以前には5月、アゼルバイジャン国防省筋の情報として、パキスタンとアゼルバイジャンが弾道ミサイルの供与で話し合いを行っていると報じられており、準中距離弾道ミサイル(MRBM)の取得に向けてアゼルバイジャンが水面下で交渉を進めている可能性は高い。

問題は、アゼルバイジャンがMRBMを必要とする理由だ。

近年、アゼルバイジャンの宿敵であるアルメニアがロシアからイスカンデル-M戦術弾道ミサイルの輸入を希望していると伝えられる他、アルメニアにある第102ロシア軍事基地(102RVB)に配備された(あるいはされる)と伝えられるイスカンデル-Mが有事にアルメニア軍に引き渡される可能性も指摘される。

だが、アルメニアに対抗するためであれば、射程2000kmものMRBMは明らかに過剰性能である。

アゼルバイジャンの最東端である首都付近から撃っても、射程500km教もあればアルメニア全土を充分に射程に収めることが可能であるからだ。

一方、アゼルバイジャンを中心に2000kmの円を描いてみると、西はトルコ全土、南はイランやイラク全土、サウジアラビア北部、東はカザフスタン西部やアフガニスタン全土、北はロシア欧州部南部がそっくり射程に入ってしまう。

アゼルバイジャンを中心に2000kmの円を描いた図
アゼルバイジャンを中心に2000kmの円を描いた図

仮にアゼルバイジャンが本当にMRBMの入手を目論んでいるとすれば、それがどこへ向けたものなのか、という疑問が浮かんでくるのは当然であろう。

もうひとつの問題は、弾頭をどうするのかということだ。

射程2000kmもの弾道ミサイルとなれば、通常弾頭を搭載するのではあまりにコストパフォーマンスが悪い。

ここで注目されるのがサウジアラビアである。サウジアラビアは1980年代から中国製のDF-3及びDF-3A中距離弾道ミサイルを保有しており、その弾頭は通常弾頭ということになっている。だが、以前からサウジアラビアがパキスタンと密約を結んでおり、有事にはすぐに使用できる核弾頭がパキスタンに貯蔵されているとの疑惑がある(これについては昨年、英BBCが詳しく報道し、日本では木村正人氏がこれを報じた。また、毎日新聞の戦後70年企画「核回廊を歩く」はパキスタン軍のベグ元参謀総長に対して「核シェアリング」構想について直撃インタビューを試みた非常に貴重な報道である)。さらにサウジアラビアはこれまでMRBMを運用する部隊の存在そのものを明らかにしていなかったが、2013年の軍事パレードで突然、この部隊が公開された。

翻ってアゼルバイジャンに視線を向けると、弾道ミサイルとパキスタンというキーワードの共通性はどこか不気味である。

サウジアラビアの場合はイランとイスラエルの核武装(特に後者)の動きに刺激されているとも言われるが、アゼルバイジャンもイランの核武装とロウハニ政権成立による米国とイランの接近に動きに神経を尖らせている可能性はある。

もちろん、アゼルバイジャンがすぐに核保有を目指すことは考えにくいし、米露がこれを許す可能性も低いが、今後、アゼルバイジャンのMRBM保有の動きはひとつの焦点となってくる可能性があろう。


「WSI DAILY 2014/8/19」への2件のフィードバック

  1. KUBミサイル・s400等のミサイルはこの弾道ミサイルを迎撃できる能力はありますか。教えてください。

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