イスカンデル-K巡航ミサイル・システムと見られる画像

WSI DAILY 2014/7/29


WSI Daily 2014/7/29

★ロシアのINF違反を米国が非難

AFP通信が伝えたところによると、7月29日、匿名の米政府高官がロシアがINF(中距離核戦力)全廃条約違反に違反して地上発射型の長距離巡航ミサイルを開発していると非難した。

1987年に締結された同条約は射程500-5500kmの弾道ミサイル及び地上発射型巡航ミサイルの開発と配備を禁じている(海洋発射型については規制外)。

ロシアがINF条約に違反して中距離弾道ミサイル(IRBM)を開発している疑惑については、2013年8月25日付けの『ワシントン・タイムズ』記事や、ロシアの核戦力に詳しいパーヴェル・ポドヴィグのブログ記事でこれまでも度々取り上げられており、現在発売中の『軍事研究』誌2014年8月号の拙稿でも詳しく扱った(小型ICBMとの触れ込みで開発中のRS-26がそれに当たると見られている)。

一方、今回問題となっているのは地上発射型巡航ミサイルについては、上記の『ワシントン・タイムズ』記事に加え、今年1月にも米国務省のジェン・サキ報道官が「ロシアがINF条約に違反して中距離の地上発射型巡航ミサイルを開発している可能性がある」と発言したことを『ニューヨーク・タイムズ』が報じていた

上記『ニューヨーク・タイムズ』記事によれば、ロシアは2008年からこのミサイルの発射試験を繰り返していた米政府は見ており、今年5月以降には国務省で核軍縮を担当するローズ・ゴッテモラー次官補がロシア側に繰り返し懸念を伝えていたという(ちなみに彼女はカーネギー財団モスクワ・センターに在籍していたこともあり、ロシア語が堪能である)。

ロシアは以前から、中国の核戦力増強や米国のミサイル防衛構想を理由にINF条約の脱退を口にしており、こうした背景の下でIRBMや地上発射型巡航ミサイルの開発を進めていた可能性がある。

このうち地上発射巡航ミサイルについては、英IISS(国際戦略研究所)のバリーとボイドが興味深い指摘を行っている。

ショイグ国防相がサンクトペテルブルグ近郊の第26戦術ロケット旅団(最近、イスカンデル-M戦術弾道ミサイルを装備した)を訪問した際の国防省公式発表写真の中に、明らかにイスカンデル-Mとは異なるミサイル車両が写っているというものだ。

イスカンデル-K巡航ミサイル・システムと見られる画像
イスカンデル-K巡航ミサイル・システムと見られる画像

バリーとボイドはこれを、イスカンデルのプラットフォームに巡航ミサイルを搭載したイスカンデル-Kであるとしている。

イスカンデル-Kの存在は以前から明らかにされており、その射程は300kmとされてきたが、バリーとボイドによればこれはMTCR(ミサイル技術輸出規制レジーム)に抵触しないようダウングレードされた数字に過ぎない。

イスカンデル-Kが使用するR-500巡航ミサイルは、ロシア海軍の艦艇が装備している3M14クラブ巡航ミサイルと同様のものだが、その射程はINF全廃条約の下限である500kmを大きく上回っている(対地攻撃バージョンの射程は600-900kmとされる)。

米国務省が懸念しているとされる「中距離地上発射巡航ミサイル」がこのイスカンデル-Kを指している可能性は高い。

ただし、前述のサキ報道官の発言も、「これが違反かどうか精査している」など、米政府として違反を断定しているわけではない。

一方、ロシアのタカ派軍事専門家として知られるイーゴリ・コロトチェンコ(軍事専門誌『国防』編集長)は、「ロシアがINF条約に違反したことなどなく、ミサイル防衛計画によって組織的にINFに違反のはアメリカの方だ(注:ミサイル防衛実権の標的用中距離弾道ミサイルを米軍が運用していることを指す)」と国営ノーヴォスチ通信に述べた

ロシア政府からの公式な反応は今のところ見られない。

(本稿では当初、問題の巡航ミサイルがKh-101/102の地上発射型である可能性があるとしていましたが、後のIISSの記事に接し、改稿しました)


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